IN SHORT
- 脳とお腹は、神経・ホルモン・免疫・腸内細菌という複数の道で、両方向に情報をやり取りしていると考えられています。これを「脳腸軸」と呼びます。
- 脳とお腹をつなぐ迷走神経と、足裏から頭蓋骨の底まで続く筋膜のつながり「ディープフロントライン」は、頭蓋骨の底・横隔膜・お腹という同じ場所を通っています。
- だから肩の休憩室では、肩を確かめるときに、頭やお腹、呼吸にも触れて、最後は同じ肩の動作で比べます。脳腸軸を手で調整するという意味ではありません。
Brain-gut axis
脳腸軸とは?
緊張するとお腹が痛くなる。お腹の調子が悪いと、気分まで沈む。脳とお腹は、別々に働いているわけではありません。
01 神経
迷走神経
脳とお腹を直接つなぐ神経です。その線維のおよそ8割は、お腹など身体の側から脳へ情報を伝える線維だと報告されています。
02 ホルモン
ストレスのホルモン
ストレスを受けると、脳からの指令でコルチゾールなどのホルモンが出て、お腹の働きにも影響します。
03 免疫
免疫の働き
腸には免疫の細胞が多く集まっていて、その働きが脳とのやり取りに関わると考えられています。
04 腸内細菌
腸内細菌と、
その代謝物
腸内細菌がつくる物質も、脳腸軸の一部として研究が進められています。
脳腸軸は、迷走神経だけ、腸内細菌だけで説明できるものではありません。いくつもの道が重なり合っている、と捉えるのが今の考え方です。
Anatomy
頸静脈孔とは?
頭蓋骨の底には、神経や血管が頭の外へ出ていくための通り道がいくつかあります。その一つが「頸静脈孔(けいじょうみゃくこう)」です。
頸静脈孔を通るもの
- 舌咽神経
- のどや舌の感覚、飲み込む動きに関わる神経。
- 迷走神経
- 首を下りて、心臓・肺、そしてお腹まで届く神経。脳腸軸の「神経の道」です。
- 副神経
- 僧帽筋と胸鎖乳突筋という、肩と首の筋肉を動かす神経。
- 内頸静脈
- 脳から心臓へ戻る血液の、主な通り道。
お腹へ向かう神経と、肩を動かす神経が、頭蓋骨の底の同じ通り道から出ている。これは解剖学の事実です。
ただし、「頸静脈孔のまわりが硬くなると、お腹や肩の不調が起きる」という因果関係が確かめられているわけではありません。解剖学は、身体を理解するための地図です。地図から考えられることと、効果が確かめられていることは、分けて考えています。
Two routes
神経の道と、
筋膜の道。
迷走神経と並べて見てほしいのが、「ディープフロントライン」です。筋膜のつながりを説明する考え方の一つで、足裏から内もも、お腹の奥、横隔膜、胸の真ん中、首の前の深いところを通って、頭蓋骨の底まで続きます。
場所
神経の道(迷走神経)
筋膜の道(ディープフロントライン)
頭蓋骨の底同じ場所
脳幹から出て、頸静脈孔を通って頭の外へ。
首の前の深い筋肉が、頭蓋骨の底につく。
首
頸動脈・内頸静脈と並んで、首の中を下りる。
首の前側の、深いところを通る。
胸
心臓や肺へ枝を出す。
胸の真ん中(縦隔)を通る。
横隔膜同じ場所
食道と一緒に、横隔膜を抜ける。
呼吸の筋肉、横隔膜を通る。
お腹同じ場所
胃や腸へ、枝を広げる。
お腹の奥、背骨の前にある大腰筋へ。
骨盤から足へ
迷走神経は、ここまでは来ません。
内ももを通り、ふくらはぎの奥から足裏へ。
神経の道と筋膜の道は、頭蓋骨の底・横隔膜・お腹で重なっています。肩の休憩室で「頭とお腹」「足とお腹」の2点に触れるのは、この2本の道を地図にしているからです。
なお、筋膜のつながりを調べた研究のまとめでは、背中側のラインなどにはつながりの根拠が示された一方、ディープフロントラインはまだ調べられていませんでした。肩の休憩室では、ディープフロントラインを「証明されたつながり」ではなく、施術で身体を見るための地図として使っています。
In practice
施術では、
どう見ているのか。
お腹を見て終わらない。呼吸を見て終わらない。最後は必ず、最初に困っていた肩の動作に戻って比べます。
1
評価する
困っている肩の動作と一緒に、お腹の張りや、押したときの痛みを確かめます。お腹の状態は、施術の目安の一つにしています。
2
仮説を立てる
お腹と組み合わせる、離れた1点を選びます。どこが関係していそうかは、その日の身体によって変わります。
3
2点に、同時に触れる
強く押さず、穏やかに2点を同時に捉えて、身体の反応を待ちます。
4
もう一度、確かめる
お腹の張りや痛み、呼吸、そして最初の肩の動作で比べます。変化が少なければ、別の組み合わせを試します。
実際に使っている、2点の組み合わせ
- お腹 × 蝶形骨のまわり
- 蝶形骨は、こめかみの奥にある頭蓋骨の中心の骨。頭蓋骨の底のそば
- お腹 × アトラス
- アトラスは、首のいちばん上の骨。頭蓋骨の底のすぐ下にあります。頭蓋骨の底のそば
- お腹 × 恥骨筋のまわり
- 内ももの付け根にある筋肉。ディープフロントライン
- お腹 × 湧泉
- 足裏の、土踏まずより少し指側にあるツボ。ディープフロントライン
- お腹 × 大腿筋膜張筋
- 太ももの外側の付け根にある筋肉。ディープフロントラインではなく、身体の横側のつながりの上にあります。横のつながり
どの組み合わせで反応が変わるかは、人によって違います。全員に同じ順番、同じ場所で触れるわけではありません。確かめて、合わなければ別の組み合わせへ。その繰り返しで、その人に合った施術を組み立てます。
施術中に観察している反応と、
言わないこと
施術を重ねるなかで見てきた反応です。医学的に効果を確かめたデータではありません。
お腹の張りが軽くなる
→ 内臓の働きが良くなった、とは言いません。
押したときの痛みが軽くなる
→ 迷走神経が働いた、とは言いません。
お腹が動く感覚がある
→ 腸の動きが良くなった、とは言いません。
お腹がじわじわ温かくなる施術する僕と、受ける方の両方が感じることもあります。
→ 血流が増えた、とは言いません。
FOR EXAMPLE
背中へ手を回すと痛く、
呼吸まで
止まってしまう場合。
まず腕のつながりとお腹の張りを確かめ、次にお腹と、アトラスや足裏などの2点に触れて、呼吸とお腹の反応を見ます。そのうえで、もう一度背中へ手を回してもらい、動きやすさを比べます。
お腹が肩の痛みの原因、という意味ではありません。肩が一人で頑張らなくていい条件を、身体の反応から探していきます。
お腹に触れられるのが
苦手な方へ
触れてほしくない場所があれば、遠慮なく伝えてください。お腹に触れずに確かめる方法もあります。施術の途中でも、いつでも止められます。
Menopause
更年期と、
脳腸軸。
更年期には、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが大きくゆらぎながら低下していきます。そして、エストロゲンと腸内細菌がお互いに影響し合っていることを調べる研究が進められています。
ホルモンの変化、自律神経、お腹。更年期の身体の変化と脳腸軸は、表と裏のような関係にあるのかもしれません。ただし、これはまだ研究の途中にある話です。腸内環境を整えれば更年期の不調が良くなる、とまでは言えません。
更年期には、ほてりや発汗、眠りの浅さ、疲れ、集中力の低下、頭の重さに加えて、関節のこわばりや、お腹の張り・胃腸の不快感が話題になることもあります。脳からの指令とホルモン、ストレスへの反応、自律神経と胃腸の働き、眠りと痛みの感じ方。いくつもの仕組みが重なっていると考えられています。
ただし、これらがすべて更年期によるものとは限りません。胃腸の症状、頭痛、関節の痛みは、ほかの病気で起こることもあります。更年期だから、胃腸が弱いから、自律神経が乱れているから。一つの原因で決めつけないことを大切にしています。
ほてりや動悸、眠れない、気分の落ち込みなどが続く場合は、まず婦人科で相談してください。更年期の不調には、医療機関で相談できる治療があります。
Map and effect
地図と効果を、
分けて考える。
A
確かめられていること
- 脳とお腹は、神経・ホルモン・免疫・腸内細菌などで両方向にやり取りしている
- 迷走神経は頸静脈孔を通り、首・胸を経てお腹へ届く
- 更年期には、エストロゲンが大きくゆらぎながら低下する
B
研究の途中にあること
- 閉経前後の腸内細菌の変化と、更年期の症状との関係
- エストロゲンと腸内細菌が影響し合う仕組み(エストロボローム)
- 腸内環境と、慢性的な痛みとの関係
C
肩の休憩室の経験と見立て
- お腹と離れた1点に同時に触れると、お腹の張りや押したときの痛みに変化が見られることがある
- 反応する組み合わせは、人によって違う
- 肩の動作や呼吸も、一緒に変わることがある
Cの施術の経験を、Aの確かめられていることとして説明することはしません。
肩の休憩室が言わないこと
- 腸内細菌を変える
- セロトニンを増やす
- 迷走神経を治療する、自律神経を直接整える
- 脳脊髄液を動かす、炎症を止める
- お腹に触れるだけで、肩のつらさが良くなる
こんなときは、まず医療機関へ
- 胸の痛み、息苦しさがある
- 急に手足に力が入りにくくなった
- これまでにない激しい頭痛がある
- 黒い便が出る、強い腹痛が続く
- お腹の張りや、押したときの痛みが続く・強くなる
Q&A
よくあるご質問
脳腸軸とは、何ですか?
脳とお腹(腸)が、神経・ホルモン・免疫・腸内細菌などを通じて、両方向に情報をやり取りしている関係のことです。緊張するとお腹が痛くなるのは、身近な例の一つです。
迷走神経は、
どこを通っていますか?
脳幹から出て、頭蓋骨の底の頸静脈孔を通り、首の中を下りて、心臓や肺、横隔膜を抜けてお腹まで届きます。
ディープフロントラインとは、
何ですか?
足裏から内もも、お腹の奥、横隔膜、胸の真ん中、首の前の深いところを通って頭蓋骨の底まで続く、筋膜のつながりを説明する考え方の一つです。研究で確かめられている途中の考え方なので、肩の休憩室では施術で身体を見るための地図として使っています。
整体で、脳腸軸や自律神経を
整えられますか?
脳腸軸そのものを手で調整したり、自律神経や腸内環境への効果をお約束したりするものではありません。脳腸軸の知識を背景に触れる場所を選び、肩の動作や呼吸の変化を確かめています。
施術中にお腹が温かくなるのは、
なぜですか?
施術中に、お腹がじわじわ温かくなる感覚を、受ける方と施術する僕の両方が感じることがあります。ただ、その理由は分かっていません。血流が増えた、内臓の働きが良くなった、とは言えないため、肩の休憩室では「そう感じることがある」という観察としてお伝えしています。
お腹に触れられるのが
苦手です。
遠慮なく伝えてください。お腹に触れずに確かめる方法もあります。施術の途中でも、いつでも止められます。理由を説明する必要はありません。
REFERENCES
- Breit S, et al. Vagus Nerve as Modulator of the Brain–Gut Axis in Psychiatric and Inflammatory Disorders. Front Psychiatry. 2018. doi.org/10.3389/fpsyt.2018.00044
- Cryan JF, et al. The Microbiota-Gut-Brain Axis. Physiol Rev. 2019. doi.org/10.1152/physrev.00018.2018
- Baker JM, et al. Estrogen–gut microbiome axis: Physiological and clinical implications. Maturitas. 2017. pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28778332
- Wilke J, et al. What Is Evidence-Based About Myofascial Chains: A Systematic Review. Arch Phys Med Rehabil. 2016. doi.org/10.1016/j.apmr.2015.07.023
- StatPearls. Anatomy, Head and Neck: Jugular Foramen. statpearls.com
Contact
肩だけでは届かなかった
ところまで、身体を見る。
触れて、確かめて、同じ動作で比べる。肩の痛みを、肩だけの問題で終わらせたくない方は、予約の前でも気軽にご相談ください。
肩の休憩室|Tokidoki整体
名古屋市昭和区/
完全予約制・完全個室
肩の休憩室での施術・情報提供は医療行為ではありません。病気やけがの診断・治療・予防を目的とするものではなく、施術の効果を保証するものではありません。症状が続く場合や体調に不安がある場合は、医療機関の受診をおすすめします。
